虹色らいんcom

小説3「地獄の王」

第5章、寮(食堂)5ー「おっ、なんかあったぜ。」

表紙に戻る

目次に戻る

前のページに戻る

灰色の文字は、作者による注釈です。
「」の中の太文字は、大きな音です。

 1行しかありませんが、作者がグロシーンと判断したので、非表示にしました。
noteでは見ることができませんが、話の内容には影響することはありません。
表示(閲覧注意)」のボタンをクリックすると見ることができますが、自己判断でお願いします。

(渡り廊下は、亡者たちが占拠していたのでさほどでもなさそうだ。)と思っていたが、左右の庭の方を見ると
木々の植え込みや低木の中に人のちぎれた手足が引っかかっているのが見える。

コンクリートの道(渡り廊下)の向こう側には、レンガ造の3階建の建物が立っている。
これが寮らしい。その道の先には木造の両開きの扉が開け放たれ、その奥では
先生や生徒だけでなく都市の人たちや市長さんの姿も見える。
私たちに気づいた生徒の1人が
「あっ、来た!」と声を上げると、市長さんがさっそく進み出て来て
「申し訳ない、オフィーリア様に」
「私?」と後ろのオフィーリアが、自分を指差しながら顔を出す。
「水を、出してもらえますか?水がないと、どうも拭き取ったりとか…。」
「申し訳ありません。」
と、先ほど運動場で「寮の水道も同じです。」(5章ー3)と発言した、メガネをかけた
黒いワンピースの女性
「貯水槽とかってありますの?」と、オフィーリア
「はい、こちらに」
と先ほどの黒いワンピースの女性が案内しようとするのを校長先生が
「あっ、こちらが寮母のマリーさんです。」と紹介してくれる。
「ここの寮母をしておりますマリーです (以下、すべてマリー)。あの、こちらの寮は
男子と女子で分かれていることは…。」
「えー!別々ですか?」
「なんですと?」
と男の部下たちから声が上がる。
「僕、小さいからいいよね。」とヒマワリ
「だめだろ。」とヒアキッソス
「というわけだから藍白、タガメも」とオフィーリアがなだめ
「えぇー!?」と男の部下たち
「良かった、女性で。」とトカレフらマーズちゃんの部下たちは安堵し
「えー!? 隊長!」とアオバとヨシツネ
「仕方ないよ。」と私
副隊長は腕組みして、ため息をついている。その横でサイケとメロディーが真剣な表情で
噛みつくように
「ハピラキ、頼んだぞ。」
「わかった、わかった。」とハピラキは苦笑い。
アオバが「あーモモタとボタンがいれば…。」とつぶやき、ヨシツネと副隊長もうなずく。
「大丈夫だって、女性ばかりなんだから、それよりお水のほうをなんとか。」
と私が言うと
「あっ、はい、このままではお風呂も入れないので、お願いします。」
とマリーさんが頭を下げ
「すみません。」と市長さんだけでなく都市の人たちや先生たちも頭を下げている。
「案内していただけます?」
とオフィーリアが進み出る。その横で藍白が不機嫌そうに
「ここは、いいんですよね。」
「はい、食堂まででしたら。お部屋の方がダメってだけで」と校長先生
「オフィーリア、私たち、ついていかなくていい?」と私
「ええ、大丈夫ですわ。」
マリーさんが
「生徒の荷物がまだ残っている所もあるんですけど、居ないようでしたら好きなお部屋を
使ってくださってくれてけっこうです。皆さん (生徒や先生)も好きなようにお部屋を
移動してかまいません。」
「都市の人たちも」と市長さん
「はい、どうぞ。」とマリーさんが言うと、周りの人たちから歓声が上がり
「キャー!どうしよう。」
「どの部屋にしようかしら?」
「寮生活って初めてだわ!」
と先ほど運動場でいた中年の女性たちや都市の人たちも、口々に話し合っている。
オフィーリアが
「じゃ、お部屋を決めといて下さいましね。」
と部下たちと共にマリーさんの後について、食堂の奥の扉へと歩いて行った。
トカレフが嬉しそうに「マーズ様、寮生活、楽しみですね。」
と他の3人の部下たちも嬉しそうにしているところを、マーズちゃんが
「お前ら、別々な。」
「えー!?」
「俺は、こいつらと居たいんだよ。」
ハピラキが「バッカス様。」
「だめだ!」
「まだ、何も言ってません。」とハピラキが口を尖らせ
「俺も、こいつらと居る。」とバッカス
「私は、別に1人でも。」と私が言うと
「だめだ!」とマーズちゃんとバッカスが同時に言い
「えぇー!?」と私
「星空の中で語りあかした仲じゃありませんの。」とフローラ(第4章の12を参照)
「えっ、フローラ様、私もですか?」とローズ
「そうよ。」
「寝るまで入り浸ってやる。」とローズが怖い顔で呟いている。
一方で周囲の人たちは、私たちがにぎやかに話し合っているのを
笑いながら見ていると、突然、オフィーリアたちが入って行った食堂のドアが勢いよく
バァン!!
と開き、息をきらしたマリーさんが姿を見せた。
「おっ、なんかあったぜ」
とマーズちゃんと私は、マリーさんの方へと歩いて行く。
他の人たちも、ゾロゾロと後ろからついて来た。

次回
第6章ー寮(機械室)1「本当に、ここって寮の蛇口に続いていると思う?」

ページ上部に戻る