虹色らいん.com

小説3「地獄の王」

第11章、第二都市(寮、2人部屋)
1,「ライガの酒って・・・。」

表紙に戻る

目次に戻る

前のページに戻る

・ 青色の()は、私(主人公)の気持ちや考えていることです。
・()の中の灰色の文字は、作者による注釈、フリガナです。
・ 太字の「」は、大きな声や音です。
・【】の中の文字は、亡くなった人 たちが発する声や音です。

この章では、ショッキングなシーンが登場します。
登場人物たちの声や動作で表現しており、『非表示』にした部分はないので
気の弱い方はご注意ください。

目次

虹池や並木道の様子

犠牲になった女性たち

二人部屋

次回

2024年 2月14日、更新しました。

広告

虹池や並木道の様子

見取り図(虹池から学校までの見取り図)

虹池から学校まで
来た時より、明るくなりました。

学校へ帰る途中、生徒や教師たちが歓声を上げ、虹池のそばに駆け寄り、水に手を浸したりしている。
虹池は穏やかに、水を満々と湛(タタ)えている。
私はオフィーリアに
「水は溜(タ)まってた?」
「ええ、十分すぎるほど。昨日、澪ちゃんに下水道のイモ虫を退治してもらったおかげよ。」
と、満足そうに虹池に目を向ける。
その部下たちは誇らし気に、虹池とオフィーリアを見ている。

並木道に行くと、木々は枯れておらず(5章-1)、所々茶色い部分があるも、ほとんどフサフサと濃い緑色の葉で覆われている。
私はフローラに
「元気になって良かったね。」
フローラは笑顔で
「みーちゃん(主人公)が、悪い空気を追い払ってくれたおかげですわ。」(5章-2)
その部下たちも笑顔でうなずき、気持ちよさそうに風にそよいでいる周囲の木々を見上げている。
その木々たちが
「ありがとう。」
と言っているのが、風に乗って聞こえてきた。

犠牲になった女性たち

学校に行くと、先に帰っていた都市の人たちが、校舎内の家具を移動したりして片付けをしている。
校長先生が来て
「みなさん、こちらの中庭で食事にしませんか? 中はまだ、片付けができていないので。」
校舎を入って渡り廊下の右側(中庭、下のイラストを参照)には、早くも寮の食堂のテーブルと椅子が運び出され、生徒たちにより白いテーブルクロスがかけられている。

マーズちゃんがキングに
「ほら、頼むぜ!」
「まったく、このわしを何だと・・・。」
ぶつくさ言いながら背後に次元ポケットが現れ、中から次々と皿に載(ノ)った大盛りの料理が出てきて
各テーブルの上を埋めていく。
その横で
「おおっ!」
「すごーい!」
都市の人たちや生徒、教師たちが手を叩いて喜んでいる。
私はキングに
「着替えてくるから」
女神たちと女性の部下たちも、寮の方に向かう。
その後ろでソウイチロウが
「こっち、すよ。」
部下たちを、『面白い物』へと案内する声が聞こえてきた。

中庭と渡り廊下周辺の見取り図

中庭と渡り廊下周辺(2023年9月13日、更新)

ページ上部に戻る

寮の中に入って扉を閉めると
パチパチパチパチパチパチパチパチ!
激しく水面を叩くかのような拍手の音が、聞こえてきた。
私が昨夜の夢で見た様に(9章-1)、入って左手の3階の手すりから、由美ちゃん、遺体の2人
本物の寮母のマリーさん、そしてライガに食べられた女生徒たちが見下ろし、私たちに拍手をして
いる。それは私だけでなく、女神たちと部下たちにも見えるようで、みんな口を開けて見上げ
圧倒されているようだ。
拍手と同時に
【ありがとう。】
という声も聞こえてくる。
「なぜか、涙が出てきましたわ。」
フローラが目元を拭(ヌグ)う。
「良かったですね、フローラ様。」
ローズも目尻に涙を光らせ、口元に笑みを浮かべている。
「泣かせるなよ、ちくしょう!」
バッカスは鼻をすすり
「バッカス様、生まれてNo.1の感動です。」とハピラキ
「頑張って良かったわね、ナナ、ミミ。」とオフィーリア
「はい、オフィーリア様!」
ナナとミミが、オフィーリアの胸に飛び込む。
「ぐすっ・・・。」とマーズちゃんは鼻をすすり
「マーズ様・・・。」とトカレフは涙目
「こんなにたくさんの人たちが、応援してくれてたんだね。」とニッカちゃん
「うれしい!」とリボルバー
ランチャーは、顔を両手で覆って泣いている。

私は(良かった。)と誇らしい気持ちで、女神たちと部下たちを眺めていたが
由美!
川原さんが浴室のある階段の方から、由美ちゃんの所に駆けて来た。
当の由美ちゃんは苦笑いしながら、私に手を振って消えた。
その周囲の3階の手すりにいた人たちも、いつのまにか消えている。
ただ1人、川原さんだけが、呆然と由美ちゃんのいた場所で立ち尽くしている。
そして、私としばらく、じっと目が合っていたが
川原!
高森くんの声に我に返り、浴室のある階段の方へと走って行ってしまった。
(もう少しだな・・いつか私と向き合って話をするのも・・・。)

寮1階と3階を合わせた見取り図

寮の1階と3階を合わせた見取り図です。
厨房や浴室付近は1階、女神たちと部下たちがいる女性の部屋は3階を表しています。(2024年2月12日、更新)

二人部屋

3階1番奥の部屋の見取り図

3階1番奥の部屋の見取り図です。

3階の1番奥の部屋の洗面所で、顔や髪についた亡者の血を流す。
窓の外から
ハハハ」と大笑いする男の部下たちの声
「ソウイチロウ、こんな絵が面白いというなら、わしが、いくらでも出してやろうぞ。」
と言うキングの声が聞こえてきた。
(絵!? ・・・絵で隠したのか?・・・咲子さんが?・・・じゃ、右腕はどうなって・・・。)

廊下の方から
「【キャー!!】」という女生徒たちの悲鳴が聞こえてきた。
部屋のドアの開く音がして
すみません! すぐに来てください!」と言う、校長先生の緊迫した声
「ど、どうなさいましたの?」とオフィーリアの声
(あー忘れてた・・・A地区が解決したから気が抜けちゃってて・・・。)
私の後ろ(洗面所)のドアが「ばぁん!!」と開き
おい! 澪木! 早く来てくれ!」とマーズちゃん
私はタオルで顔を拭きながら、後ろを振り向き
「ライガはもういないから、大丈夫だと思うよ。」
「なに! ライガって、それじゃ、あの手すりのやつらは・・・。」
私は早足で歩きながら
「ライガに殺された人たち。」
洗面所のドアの向こうでいたバッカスが
「じゃ、ライガの酒って・・・。」
「人間。」
ええ!!」とバッカスの横で、ハピラキが声を上げる。

ページ上部に戻る

廊下に出ると、オフィーリアとフローラ、その部下たちが真っ青な表情で立ち尽(ツ)くし、私の姿を見ると、ホッと安堵した表情になる。
ナナとミミが
「あっ 澪様!」
「大変でございます!」
「マーズ様!」とトカレフたち
「中で・・・。」
校長先生が、ドアを開けた二人部屋の中を指差している。その指が震えている。
私の前をキングが、男性の部下を従え階段を上がって来て
「どうした?」
大股で、二人部屋の方に歩いて行く。
その間を縫ってニッカちゃんが、マーズちゃんの方に駆けて来た。
私は立ち止まり、キングの様子を窺(ウカガ)う。
私とバッカスの部下たちも、こっちに来て窺っている。
バッカスが、サイケとメロディーに
「ライガの酒って人間だったぜ!」
「ええっ!?」
2人だけでなく、そこにいるほとんどの者が、びっくりした表情で声を上げる。
部屋の中を覗いた、キングとクリスとルナの部下たちは
うわっ!!」と叫び声と共に腰を抜かし
藍白とタガメは、廊下で座り込んでいるオフィーリアに駆け寄る。
ナナとミミが
「姫、ここから離れましょう。」
一方の藍白とタガメは、部屋の中を見て
うわぁ!!」と声を上げ、オフィーリアを守る様に抱え込み、私の方に目を向けた。
ナナとミミも、私の方を見た後
「姫、こちらへ、」と、なおも、こちらの方へ促す。
川原さんは、再び私と目が合い
高森くんは
うわっ!」と声を上げて、後ろへ退いている。
それを見て、川原さんも真っ青な表情で後ずさる。

私は座り込んでいるオフィーリアの近くまで行くと、手すりから食堂を見下ろす。
食堂では生徒たちや教師たち、都市の人たちが「どうしたのか?」といった表情でこちらを見上げている。その後ろの方でアルテミスが「どうしようかしら?」といった表情で立ち、私の方を見上げた後
扉の方に目を向けた。
ドアの方から木花 咲子さん(以下、すべて木花さん)がオドオドした表情で入って来て、真っ青な表情でこちらを見上げる。
「地獄姫様よ!」と川原さん
その場にいる全員が、その方に目を向ける。
地獄姫様がやったのよ!
キングが「お前が!?」という目で私を指差し、私は「違う違う。」といった表情で手を振る。
一方の木花さんの表情には、安堵の表情と口元に笑みが浮かび、再び扉を開けて出て行った。
「私と由美で呼び出したから!」
「どういうこと? 川原さん!」
浴室のある階段の方からエルザ、その後ろにはスカーレットとはるか。
「だから、急に呼び出したから地獄姫様が怒って。」
「いや、それはないぞ、川原という者。」
(キング、良いとこあるじゃん!)
「えっ、どうしてですか?」と川原さんは涙に濡れた顔で、キングを見上げる。
「お前は、王宮に来たことがあるのか?」
「ありません。」
「行けば、みんな知っておる。」
「えぇっ! そうなんですか?」
その横では「おぉ!」といった表情の高森くん
エルザたちや食堂にいる人たちも、「おぉ!」という様な表情
(キングとしては、上出来だな。)
「うむ、あやつは急に呼び出したからといって怒りはせぬ。」
(いや、あんまり急に呼び出されるのも困る・・・。)
市長さんだけが、「あれ?」といった表情でアルテミスに目をやり
アルテミスは、人差し指を口に当て「しー。」
市長さんは口を開け、「ああ。」といった表情
(何が「ああ。」なんだか・・・。)
私は、ため息を1つ吐(ツ)くと
「あの・・中に死体以外、何もないようでしたら、中庭にいきませんか? お昼ご飯を食べたいんですけど・・・アルテミスが、何か報告があるようですし。」
「何!? お前というやつは・・・。」
私はキングを無視して
「部屋の中のイモ虫は、もう、その部屋にはいないと思いますよ。たぶん、今は蛹(サナギ)になって、どこかの地下で眠ってます。」
周りの人たちは、私がすらすら話すので、「本当だろうか?」と訝(イブカ)しんでいる様子
「さあさあ皆さん、中庭に、こちらの王が用意したおいしい料理がありますよ。」
と校長先生が促し
(さすが! 校長。)
その声に押される様に、周囲の人たちが動き出し中庭へと歩き始めた。
横で、私の部下たちが「ふー」とため息を吐くのが聞こえてきた。

次回
第11章ー第二都市(寮の3階、1番奥の部屋と二人部屋)
2,「この星の警戒レベルを、5に引き上げました。」

ページ上部に戻る