虹色らいんcom

小説3「地獄の王」

第5章、第二都市(A地区、窪地(虹池))
1,「どうして水がありませんの?」

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・青色の()は、私(主人公)の気持ちや考えていることです。
・灰色の()は、作者による注釈、フリガナです。
・太字の「」は、大きな声や音です

目次

(もう少しだから頑張って)

A地区の崖

崖の上

窪地

次回

2024年 2月14日、更新しました。

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(もう少しだから頑張って)

午前中の砂漠

もう3、4時間、歩いただろうか?
さすがの女神たちも疲れて誰も話す者はなく、黙々と前を向いて歩いている。
雲1つない青い空、太陽の光はサンサンと照り、髪についた亡者の血も固まり、ガビガビになってしまった。(オフィーリアの水で洗い流してもらえば良かった・・・忘れてた。)

「休憩しようか。」
声をかけ適当な所に座ると、4人の女神たちも私を囲むようにして座った。
「お水をどうぞ。」
オフィーリアが鏡から、それぞれのコップに水を注いで回る。
「俺は、これでいいよ。」
バッカスは、自分の鏡からコップに酒を注いだ。

私は彼女たちを眺めながら、副隊長に思いを馳(ハ)せていた。(もう少しだから頑張って)
オフィーリアが気にしている藍白は、彼女が言うように、ずっと彼女のことを考えながら、他の部下たちに指示を出し、校舎内を巡回している。ヨシツネも一緒に巡回している。アオバは・・・屋上で、マーズちゃんの部下たちと、這(ハ)い上がってきたり、飛んできたりする亡者たちを叩き落としている。
運動場では亡者たちが、足の踏み場もないほど、ひしめきあい、我がもの顔で、のさばっている。
運動場の外へと続く正門は、5本のコンクリート製の柱があり、その間は、重そうな鉄の扉で固く閉ざされているが、亡者たちは、その下を通って出入りしているようだ。
(とりあえず校門から行くか、礼儀だし・・・。)

私は20分ほど見計らって
「行こうか。」と立ち上がると
連られるように4人の女神たちも立ち上がり、私を先頭に歩き始めた。

砂漠から見たA地区

崖の向こうが、A地区です。
色の変わっている所が、滝の跡です。

A地区の崖

さらに1時間ほど歩くと、ようやく地平線上に、土色の平らな岩のような物体が見えてきた。

「あれが崖ですわ!」
フローラが、笑顔で指(サ)し示めす。
他の女神達も自然と笑顔になり、足が早くなった。

30分ほどで到着し、土色の平らな岩は、そそり立つ崖となった。
その上から
「ウォー!」
「ガー!」
「ギャー!」

亡者たちの争う声が聞こえてくる。永遠と休みなく争っているのだろう。

しばらく女神たちと一緒に崖を眺めていると、上からゴリラのような大きな体をした亡者が
黒っぽい背中を下にして真っ逆様(マッサカサマ)に落ちてきた。
「離れて!」
と言いながら刀を出し、落ちてきた亡者を斬る。
「ズシン!!」と地響きを立てて、地面に叩きつけられ、土ぼこりが舞う。血が飛び跳ね
「キャッ!!」と女神たちや私の体に降りかかる。(あーあ、マントも汚れた。)
オフィーリアやフローラのマントも、赤い斑(マダラ)模様になった。マーズちゃんはもともと赤いマントなので・・・バッカスは一早(イチハヤ)く遠くに下がっている。さすが、ダンスも得意だから反射神経がいい。
再び、もう一体、落ちてきた。
女神たちはさらに離れ、(これは、キリがないな。)と思いながら斬りつける。
後ろの女神たちに
「行こう、キリがない。」

右側へ壁に沿うように歩いていくと、女神たちも上を見上げながら、ついてきた。
壁に2、3mほどの筋がついており、オフィーリアが
「見て! あれは滝の跡よ。」と嬉しそうに指(サ)し示す。(上のイラストを参照)

さらにしばらく行くとバッカスが
「あそこだ。」と指で指(サ)し示す。
その方を見ると、崖の壁が途切れている。(下のイラストを参照)

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砂漠の方から見たA地区

砂漠から見たA地区
向かって右側が、階段です。

崖の上

走って近くまで行くと、人が1人通れるぐらいの階段が、上まで続いている。
私を先頭に坂を上がって行くと、崖の上に出た。
下を覗くと、サファロスの言う通り(4章-4)、獅子のような顔で、ゴリラのような大きな体をした亡者たちが、ものすごい声で唸り吠えながら、叩き合い殴り合い、噛みつきあっている。
どの亡者たちも、私に気づかず争っている。
オフィーリアとフローラはマントで口元を押さえ、真っ青に震えながら目を見開き、A地区を
見下ろしている。マーズちゃんとバッカスは、一言も発せず青い顔でじっと、A地区を眺めている。

その先に目をやると、同じように崖がそびえ立ち、その下と地面の境に半円形の穴が開いて、その前を木や石で塞ぎ、その中で人が動いているのが見える。おそらくサファロスの言うA地区の人たちだ。
私が歩き出すと、女神たちも歩き出した。
崖の下から突風が吹いてきて
「キャッ!」
オフィーリアやフローラのフードを跳ね上げる。
洞窟の前の木や石の隙間から、A地区の人たちが「誰だろう?」という風に顔を近づけてきた。

砂漠から学校まで

砂漠から学校までの状況です。
向かって右側に、半円形の穴が2つ、開いています。

窪地

しばらく歩いて行くと、窪地が現れた。底はかなり深くなっているが、水は一滴もない。
オフィーリアが、しゃがんで窪地の底を見おろし
「どうして水がありませんの? 見て!  底に、お魚さんたちの死骸があるわ。」と指で指し示す。
私と女神たちも、窪地の底を覗き込む。
窪地の底に張り付くように、魚の死骸が重なりあっている。そして底から舞い上がるように
死骸の臭気が立ち昇ってくる。
「うえっ! 酒がまずくなる。」
バッカスは鼻と口を押さえながら一早く立ち上がり、マーズちゃんが死骸に火を放つ。死骸はあっというまに灰になり、フローラが
「花むけよ。」
鏡から花を降らせた。
オフィーリアは、しばらくじっと底を眺めていたが
「底に鏡を置いてくるわ。」
壁を伝って窪地を下り始めた。
「大丈夫かよ?」とマーズちゃんが心配し
「放り投げたらダメなの?」と私
「んー・・・・。」
オフィーリアは窪地の縁に腰掛け、しばし底を眺めていたが、意を決し
「えいっ!」
鏡を放り投げた。
鏡はコロコロと転がり、小さな石ころに当たって、鏡の面を上にして止まった。
オフィーリアは、ホッとした様子で
「良かった、反対になったら、どうしようかと思いましたわ。」
「良かったね。」と私
やがて、鏡から水がボコボコと湧き出るように溢れ出す。
「この後、どうすんだよ?」とマーズちゃん
「えっ・・・と」
オフィーリアは私を見上げ
察した私は
「どれぐらいで、いっぱいになる?」
「えっと・・調節はできましてよ、えっと、1週間? そちらに合わせますわ。」
私はうなずき
「わかった、とりあえず、学校の様子を見てから考える。」
と言って立ち上がり、オフィーリアもうなずいた。そして、マーズちゃんとフローラに両手を引かれ立ち上がった。
私はそれを確認するとメモ用紙を取り出して、それを見ながら、学校に向かって歩き出した。

今回のお話の中で、主人公と女神たちは、砂漠から窪地までを通って来ました。
次回は、並木道を歩き学校に向かいます。

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次回
第5章、第二都市2ー桜並木、運動場「空気が変わったわ。」

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