前回と同じ、寮の機械室とその周辺を拡大した見取り図です。
機械室内の機械や道具などは省略しました。
寮1階の全体を見たい場合は、第5章ー5をご覧ください。
第6章、寮(機械室)
2.「目の前のやつに集中しよ。」
2024年 3月 8日、更新しました。
本編には死体が出てきます。苦手な方はご注意ください。
・ 青色の()は、私(主人公)の気持ちや考えていることです。
・()の中の灰色の文字は、作者による注釈です。
・太字の「」は、大きな音や声です。
・小さい文字の「」は、小さな声や小さな音を表しています。
目次
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死体を引き上げてみる
副隊長の顔が「くっ!」と歪み
「くわー!重てー!!」
アオバが声を上げ、水が
「ザバー!!」
音を立ててアオバの頭を伝って、貯水槽(?)の中へと勢いよく落ちていく。
ドアの所では、ヨシツネとマーズちゃんの部下たちも見守っている。
オフィーリアと藍白たちも来た。
「どうですの?」
「死体で蓋をしているんじゃないみたいだぜ。」
「えー!?」
部下たちも不安そうに、部屋の中を覗き込んでいる。
アオバが起き上がり、両手に抱えていた死体たちを「ふー。」と言いながら床に置いた。
貯水槽(?)の中を覗き込むと、頭の中に、学校の下駄箱から廊下に上がる時に視(ミ)えた、廊下を全速力で走って逃げる女生徒の姿(幻覚)が、浮かぶ。
(そうだ!あの、倒れた下駄箱や血は、亡者たちが、したことなの?)(第5章-4)
貯水槽(?)の中の水は案の定、流れて行かず溜(タ)まったまま。
その底には、2つの取手が付けられた、鉄でできたような四角い板がある。
「開けてみましょうか?」とアオバ
「いや、ダメ!マーズちゃんもオフィーリアもみんな下がって!機械室を出てドアを閉めて! アオバ、あの板の所を棒で突いてみてくれる?」
「了解!」
私の緊迫した声で、ヨシツネ以外全員、外に出る。
私の手には、いつしか刀が握られ、副隊長とその後ろのドア付近で、ヨシツネも刀を両手に構えている。アオバは細長い棒を1本、両手に持っている。
ドアの外ではトカレフが
「マーズ様、ドアを閉めますか?」
「んな素直に俺がきくか、構えろ!」
「はい!」と同時に「ガチャ!!」と銃の音が聞こえてきた。
「えー!? 」
私は苦笑し、釣られて副隊長とアオバも苦笑いになっている。
私はふと、アオバが引き上げた死体に目をやる。(あの女生徒だ!私の前を走り抜けて行った
(第5章-4)・・どうして右腕がないの?・・・・。)
私は小声で
「アオバ、ちょっと待って・・ヨシツネ。」と手招きする。
「はい。」
ヨシツネが小声で返事をして、私の所に来た。
「マーズちゃんに、」
「どうした? 」
マーズちゃんが顔を見せる(さすが私の親友)。その後ろにはニッカちゃんがいる。
「あの寮母さん見てて。」
「OK。」
(やっと、この水の溜まった場所が何かわかった、下水道だ。機械室のこの部屋を見て不思議だった、なんでこんな地面の下にあるの? 貯水槽っていったら屋上とか高い所にあるもんだよね(この小説内での主人公の説です)。みんな知らないからこんなものかって・・だめだ、目の前のやつに集中しよ。それから・・・。)
マーズちゃんが機械室を出たのを確認したヨシツネが、私にうなずいた。
「アオバ、お願い。」
「はいっ! 」
手に持っていた棒を水の中に入れ、板を2回突いた。
「ゴンゴン」と鈍い音がする。
「もう1回。」
「ゴゥンゴゥン!」
今度はさらに、くぐもった音が聞こえた。
「下がって。」
私と部下の二人は、貯水槽じゃなく下水道から、目を離さずに一歩下がる。
根くらべによる結果
1分ほど経っただろうか?(根くらべだ。)
さらに1分経った。
「パァン!!」
機械室の外で銃声がした。
「キャー!!」
ヨシツネがドアの方に顔を向け
「マーズ様が!」
(あっちが我慢できなかったか・・・。)
「来ました!」
アオバが後ろに下がる。
「ガシャーン!」
水飛沫(ミズシブキ)と共に、板が天井近くまで宙を飛ぶ。その下からピンク色のイモ虫のような
長い生き物が出てきて、アオバも飛び上がり
「オリャ!」
そのイモ虫の頭に棒を振り下ろした。と同時に自分も天井に頭をぶつけ、その下を副隊長の刀が真横に動き、イモ虫が真っ二つに切られ、その切り離された上部分が床に転がり、ピクピクと痙攣していたが、やがて動かなくなった。
その横でアオバが
「いてぇ!」
しゃがんで頭を押さえている。
私は下水道を覗き込み、両手を差し入れて、イモ虫の切り離された下部分を引っ張り上げる。
「自分がします。」と副隊長
私は離れ、ヨシツネが駆け寄る。
「こんにゃろ!」
アオバは涙目で、副隊長と一緒に引っ張り上げ
「スポン!!」という音と同時に抜け
「うわっ!」
二人が尻もちをついた。
すぐさま
「ザァッ!」
水が勢いよく流れ始める。
「ふうっ。」と私は息を吐(ツ)き
「やったね!」と笑顔で親指を立て
「「「おお!」」」
3人が笑顔で、親指を立てた。
水の流れる音を聞きつけたオフィーリアが駆けてきて、中を覗き込み、笑顔で
「良かったわ! 流れていますわ!」
「「おめでとうございます、姫!」」
ナナとミミ、タガメも、彼女を囲んで褒(ホ)め称(タタ)えている。
藍白が、笑顔で中を見て
「なんだ、それ?」
「やるよ。」
副隊長が、藍白に放り投げた。
「うわっ! 」
藍白が慌て
「あっはっはっ。」
アオバとヨシツネが笑い、私も笑顔になりながら、床に転がっているもう半分を手に取った。
(涅槃(ネハン)により生まれた怪物?・・でもないな。ハップルの実験動物・・・かな?)
副隊長も自分が放り投げた半分をもう一度拾い上げ、私に
「どうします?」
「アルテミスに調べてもらう、死体を運んで。」
「了解。」
そこにいる部下たち全員が二人1組で死体をかつぎ、機械室の外へと運んで行く。
(4体か・・しかもみんな服を着ていない。水は・・溜(タ)まっていたから流れで脱げたってのも、おかしいな? それとも、どこかの下水道から侵入してきて、ここに流れついたのか? それにあの女の子は
あのイモ虫に追われていた・・・のか?)
オフィーリアが、藍白とミミが抱えている死体の顔を見て
「この方、寮母さんですわ!」
藍白が落ち込んだ表情を見せ
「姫、申し訳ない、私が付いていながら・・・・・。」
「あなたのせいじゃ、ありませんことよ。」
オフィーリアが慰めながら、外に出て行く。
その後ろから、死体を担いだヨシツネ、アオバ、副隊長、そして最後にイモ虫を手にした私が、機械室を出て行った。
次回
第7章ー寮(食堂)
1,「銀河からってことになりますか?」