虹色らいん.com

小説3「地獄の王」

第3章、村と居酒屋
2,「あの子たちを頼むわね。」

表紙に戻る

目次に戻る

前のページに戻る

夕方

前回の続きです。
火の女神のマーズちゃんと川の女神のオフィーリアに、『花の女神フローラと、酒と音楽の女神バッカスがいなくなったこと』を質問してみます。

目次

学校のパンフレットから

居酒屋に入ってみた

次回

2025年 3月 9日、編集しました。

2025年 2月 17日、編集しました。

広告

学校のパンフレットから

マーズちゃんが
「サファロスだったら、さっき、あの辺であったぜ。ていうか、向こうは気づかずに
通り過ぎたけど・・バッカスのやつ、酒の出る鏡でも作ったのか?」
「たぶん・・・。」と私
「おそらく、お部屋で毎日、お酒を飲むつもりですわ。生徒たちは、みんな1つの建物で
暮らしておりますの、ごらんになります?」
オフィーリアが、学校のパンフレットを差し出した。

パンフレット内の学校の見取り図

パンフレット内の、学校敷地全体の見取り図です。

私はそれを受け取り
「へえー。」と言いながらパンフレットを広げ、覗き込むマーズちゃんに、よく見えるように体を寄せる。
「あっ、そういえばサファロスが「第二都市が大変なことになってる」って、都市の人たちが、みんな
パニックになってて、2人とも、部下たち全員、第二都市に行ってるの?」
「「うん。」」
2人同時にうなづく。
「じゃ、学校は無事なのかしら?」とオフィーリア
「行ったらなかったりしてな。」とマーズちゃん
「んーだったら入学はあきらめるよ。別に入学しなくても良さそうだし・・・。」
「何が?」とマーズちゃん
「何を?」とオフィーリア

「だから、これだけ被害が大きくなった原因。私は降魔術だと思ってる、『悪魔を呼び出す』
みたいな・・・。」
「誰が、何を呼び出そうといたしましたの? もう悪魔はいませんのに・・・。」とオフィーリア
「だから・・・私。私は全然『来てください』って声は聞いてないんだけど、ハップルが私の鏡に
仕掛けたことと、うまく繋がって、地獄の穴が大きく広がった。で、その場所が、第二都市だったから
そこが今、亡者たちで大変なことになってる。でも、誰がしたのかはわからなくて、たぶん、行けばわかると思うんだけど・・・・。」
「お前ぐらい力の強いやつがいる、ってことか?」
「んーというより、体の中に持っているんじゃないかな? だから普段は表に出てこなくて、パッと見
わからないんだけど、降魔術でその力が出てきてしまった。」
「なるほどね。」

突然、地面が盛り上がり人の形になったかと思うと、髪をアップにしたガイアが現れた。
「あっガイア! フローラとバッカスは見つかった?」と私
「ええ、今、あの村の居酒屋にいるわ。」
そう言って、明かりが灯っている村の方向を指し示す。
「結局、酒かよ。あいつは・・・。」とマーズちゃんはつぶやき
「すぐ行くよ。」
私は立ち上がり、オフィーリアにパンフレットを返す。
「あの子たちを、頼むわね。」とガイア
「うん・・・長いお別れになりそう?」
「そんなに長くはないわ。ほんの半年か1年、ってところよ。」
マーズちゃんが立ち上がり、オフィーリアが焚き火に自分の鏡から水をかけている。
私はマントをカバンから取り出し、袖を通してフードをかぶり、ガイアについて歩き出した。

ページ上部に戻る

居酒屋に入ってみた

私たち4人は、居酒屋の前に立った。
中からは、男たちの、にぎやかな笑い声や話し声が聞こえてくる。
私が先になってドアを開けると、バッカスが、酒の入ったジョッキ片手に男たちと大笑いをし、その
片隅で、フローラがテーブルに置かれた2、3口食べた痕跡のあるオムライスを前に、所在なげな感じで
ポツンと座っている。
そこへウェイトレスらしき女性が、フローラの前に水の入ったコップを置き、フローラが笑顔で返して、その女性と一緒にドアの方を見ると、満面の笑顔で
「お母様! みんな!」
勢いよく立ち上がった。と同時にバッカスと男たちの笑い声が止み、一斉に私たちの方を見る。

男たちは沈黙し、バッカスは上機嫌で「よっ!」とジョッキを持ち上げた。
「やっぱりな・・・。」とマーズちゃんはあきれ
私は駆け寄ってきたフローラに
「サファロスが捜してたよ。」
「お、・・おぉー!かわいいー!」
「バッカスちゃんのお友達だ。」
「美人の友は美人、類は友を呼ぶってやつだ。」
と、どよめき、私たちを見て大騒ぎになる。ウェイトレスのお姉さんも頬を赤らめ「へぇー」と
いった表情で私たちを見ている。

ガイアが笑顔で
「じゃ、私は帰るわね。」
「お母様、もうお帰りになりますの? ここのオムライス、とてもおいしいのに。」
「ええ、フィリップたちが心配していますから。サファロスにも伝えないと。」
「あっ、サファロスにごめんね、って言っといて。」
2人が話している横から、男たちが
「お母様、一緒に僕たちとオムライスを、」
「美しい・・・。」
と、うっとりしている。
ガイアは出て行き、私たちはフローラと同じテーブルに座った。

広告

次回
第3章、村と居酒屋3ー「私の子供! 子供を知りませんか?」

ページ上部に戻る