ケイトさんの居酒屋の広告のイメージ画像です。
スコットランド・ゲール語で「ようこそ、居酒屋 ケイトの、お昼から夜まで」
と書かれています。
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第3章、村と居酒屋2ー「あの子たちを頼むわね。」
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学校のパンフレットを見て
マーズちゃんが
「サファロスだったら、さっき、あの辺であったぜ。ていうか、向こうは気づかずに
通り過ぎたけど・・バッカスのやつ、酒の出る鏡でも作ったのか?」
「たぶん・・・。」と私
「おそらく、お部屋で、毎日お酒を飲むつもりですわ。生徒たちは、みんな1つの建物で
暮らしておりますの、ごらんになります?」
オフィーリアは、学校のパンフレットを私達の前に差し出した。
私は、それを受け取り
「へえー。」と言いながらパンフレットを広げ、覗き込むマーズちゃんに、よく見えるように体を寄せる。
「あっ、そういえばサファロスが「第二都市が大変なことになってる」って、都市の人達が、みんなパニックになってて、2人とも、部下たち全員、第二都市に行ってるの?」
と言って、私は再びパンフレットに目を向ける。
「うん。」と2人同時にうなづく。
オフィーリアが
「じゃ、学校は無事なのかしら?」
「行ったらなかったりしてな。」とマーズちゃん
「んーだったら入学はあきらめるよ。別に入学しなくても良さそうだし・・・。」
「何が?」とマーズちゃん
「何を?」とオフィーリア
「だから、これだけ被害が大きくなった原因。私は降魔術だと思ってる、『悪魔を呼び出す』
みたいな・・・。」
「誰が、何を呼び出そうといたしましたの? もう悪魔はいませんのに・・・。」
「だから・・・私。私は全然『来てください』って声は聞いてないんだけど、ハップルが私の鏡に
仕掛けたことと、うまく繋がって、地獄の穴が大きく広がった。で、その場所が、第二都市だったから
そこが今、亡者たちで大変なことになってる。でも、誰がしたのかはわからなくて、たぶん、行けばわかると思うんだけど・・・・。」
「お前ぐらい、力の強いやつが、いるってことか?」
「んーというより、体の中に持っているんじゃないのかな? だから普段は表に出てこなくて
パッと見、わからないんだけど、降魔術でその力が出てきてしまった。」
「なるほどね。」
突然、地面が盛り上がり、人の形になったかと思うと、髪をアップにしたガイアが現れた。
「あっガイア! フローラとバッカスは見つかった?」と私
「ええ、今、あの村の居酒屋にいるわ。」と言って、明かりが灯っている村の方向を指し示す。
「結局、酒かよ、あいつは・・・。」とマーズちゃんはつぶやき
「すぐ行くよ。」
私は立ち上がり、オフィーリアにパンフレットを返す。
「あの子たちを、頼むわね。」とガイア
「うん・・・長いお別れになりそう?」
「そんなに長くはないわ。ほんの半年か1年、ってところよ。」
マーズちゃんが立ち上がり、オフィーリアが焚き火に自分の鏡から水をかけている。
私はマントをカバンから取り出し、袖を通してフードをかぶり、ガイアについて歩き出した。
ケイトさんの居酒屋
私たち4人は、居酒屋の前に立った。
中からは、男たちの、にぎやかな笑い声や話し声が聞こえてくる。
私が先になってドアを開けると、バッカスが、酒の入ったジョッキ片手に、男たちと大笑いをし、その片隅でフローラが、テーブルに置かれた2、3口食べた痕跡のあるオムライスを前に、所在なげな感じでポツンと座っている。
そこへ、居酒屋のウェイトレスらしき女性が、フローラの前に水の入ったコップを置き、フローラが笑顔で返しウェイトレスと一緒にドアの方を見ると、満面の笑顔で
「お母様! みんな!」
と勢いよく立ち上がった。と同時にバッカスと男たちの笑い声が止み、一斉に私達の方を見る。
男たちは沈黙し、バッカスは上機嫌で「よっ!」とジョッキを持ち上げた。
「結局、酒かよ、お前は・・・。」とマーズちゃんはあきれ
私は、駆け寄ってきたフローラに
「サファロスが、捜してたよ。」
「お・・おぉー!かわいいー!」
「バッカスちゃんのお友達だ。」
「美人の友は美人、類は友を呼ぶってやつだ。」
と、どよめき、私たちを見て大騒ぎになる。ウェイトレスのお姉さんも頬を赤らめ「へぇー」と
いった表情で私たちを見ている。
ガイアが笑顔で
「じゃ、私は帰るわね。」
「お母様、もうお帰りになりますの? ここのオムライス、とてもおいしいのに」
「ええ、フィリップたちが心配していますから、サファロスにも伝えないと、」
「あっ、サファロスに、ごめんねって言っといて。」
2人が話している横から、男たちが
「お母様、一緒に僕たちとオムライスを、」
「美しい・・・。」
と、うっとりしている。
ガイアは出て行き、私たちは、フローラと同じテーブルに座った。
次回
第3章、村と居酒屋3ー「私の子供! 子供を知りませんか?」