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小説3「地獄の王」

第3章、村と居酒屋
1,「本当の強さなんて、服なんか関係ないのにね。」

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昼の砂漠

・青色の()は、私(主人公)が思ったり考えていることです。
・灰色の()は、作者による注釈、フリガナです。

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砂漠の亡者たち

風の女神からの情報

火の女神、川の女神との再会

次回

2024年 10月 23日、更新しました。

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(c)虹色らいん - イラスト素材 PIXTA -

砂漠の亡者たち

砂漠1

地上に出ると、私はすぐさま刀を出し、そこらじゅうで争ったりうごめいている亡者たちを切りつけ
始めた。
血しぶきが上がり、私の顔や髪、服に赤い模様が広がっていく。

亡者といっても人の形をしておらず、醜い心がそのまま体に現れ、イボが全身にあったり、皮膚の色が毒々しい緑色やピンク色だったり、ぬめっとしていたり、爬虫類よりもさらに気味の悪い姿をしている。

私は、それらをすべて一人残らず切りつけていった。
なので、私の通った後には、亡者の死体が転がった血の海が広がっていく。
(予想以上に多い・・私ひとりだけ遠くからで正解だった。でもここでこれだけ多いと、第二都市は
さらにすごいことになっているはず・・早く行かないと・・・・・。)

亡者たちの集団が途切れたので、私は立ち止まって振り返る。
私の後ろには、亡者たちの屍(シカバネ)が転がった血の海が、地の果てまで広がっている。
肩で息をしながらそれを眺めていると、それらが地の底へと沈み込み地獄へと戻っていく。
その地下では、ドラゴンたちが待ち構えている。

 

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風の女神からの情報

 

しばらく、それを眺めていると、風に変化したサファロスが
「さすが・・・・・。」
亡者たちの屍を見ながら、近づいてきた。

私は横目で
「どうしたの? 第三都市は?」
「実は、フローラとバッカスがいなくなっちゃって・・・・・・。」と気まずそうに言う。
「えっ!? ・・部下たちは?」
「第二都市に行ったんだ」ってガイアとリリスが言うもんだから、第二都市に行ったんだけど・・・。」
「うん。」
「すごいことになってて、第二都市の人たちを助けないといけないもんだから身動きがとれなくて・・・で、俺が捜してる。」
「すごいって、どんな風に?」
「それは・・・あんな感じ?」
だいぶ斑(マダラ)になった血の海を指差し
「都市の人たちがパニックになってる。お前の部下たちが来たから離れたんだけど・・・。」
(みんな第二都市の人たちを避難させるので、いっぱいいっぱいってところか・・・)
「で、バッカスとフローラはみつかった?」
肩をすくめ
「まだ、で、お前にも捜して欲しいなって・・。」
「・・・わかった。とりあえず、あっち(第二都市)に向かって進むよ。ひょっとしたら第二都市に
行ってるかもしれないし・・サファロスは、第二都市や第三都市の情報を持ってきてくれる?」
「わかった。」
口元に笑みを浮かべると、さっと一陣の風と共にいなくなった。

 

第二都市に向かって歩きながら、ため息をつく。
(バッカス、珍しく素直に人の言うことを聞くと思ったら、あの時、すでに行くことを決めていたな。
恐らく、酒が無限に出る鏡でも作ったに違いない・・・フローラは、バッカスと一緒にいると考えて
いいのかな? マーズちゃんとオフィーリアは、「第二都市に行く」って言ってたけど・・・・。)

 

しばらく歩いているが、茶色い土の地面が延々と広がっているだけで、誰にも会わないし亡者たちにも会わない。
(おそらく他の亡者たちに「私がここにいる」って連絡がいったのだろう。亡者たちには亡者たちの
ネットワークがある。ケンカばかりしているように見えて似たもの同士、仲間を作り、いづれ徒党を
組み始める。急がないと・・・・。)

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火の女神、川の女神との再会

 

やがて太陽が西の空へと沈み始め、辺りは夕闇が迫ってきている。
遠くの方に、民家らしきものがポツポツと見え始めた。
それらの窓に灯りがつき、夕飯らしき煙が立ち上る。
(この様子だとまだ亡者たちは来ていない・・おそらく今、第二都市では、部下たちと亡者たちとの激しい争いが、繰り広げられているのだろう。でも、亡者の数によっては、いつまで持つか・・・。)

私は、村が見下ろせる小高い丘で立ち止まり、そこに座った。
(あまり、村人たちに姿を見られないほうが良い。顔の血は持ってきたタオルで拭き取ったけど着物や
髪には血が付いてるし・・ここなら、亡者たちが来ればすぐわかる。)

「冷たくって、おいしいお水はいかが?」
オフィーリアが声をかけてきた。
思わず笑顔で見上げ
「うん、欲しい。ありがとう。第二都市に行ったと思っていたのに・・。」
反対側からマーズちゃんが
「焚き火、作ろうぜ。」
持ってきた木切れを小さな山の形に組み、菱(ヒシ)形の鏡をかざすと、すぐに火が燃え上がった。

私は、木でできたコップを鞄(カバン)から取り出す。
オフィーリアは私の横に座って、正方形の鏡からその中に水を注ぎ入れながら
「藍白がね、「先に行って様子を見てくる」って言って、「それから」って言われたんだけど・・・退屈で来ちゃった。」
「藍白って・・あの眼鏡の子? うちの副隊長と同じ服を着てる。」
「ええ、そうよ。・・・あの服を着てたら向こうから逃げていくって・・・でも、本当の強さなんて、服なんて関係ないのにね・・はい。」
それを受け取り
「ありがとう。マーズちゃんとこも?」
「うん。・・トカレフが「安全かどうか確認できたら」って、安全じゃないから行くって言ってんのに
待ってたら、ばあさんになっちまうぜ。」
緋色をした磁器のコップを差し出し、オフィーリアに水を注いでもらう。
「トカレフって、長い黒髪の子?」
「うん・・サンキュー。」
そう言って、コップの水をすする。
「さっき昼ぐらいかな、サファロスに会ったんだけど、バッカスとフローラがいなくなったって。」

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次回
第3章、村と居酒屋2ー「あの子たちを頼むわね。」

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