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小説3「地獄の王」

第17章、第二都市(食堂)
1,「月の光は幻覚を視せるのよ。」

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イチジクと文旦とスプーン

イラストの、いちじくと文旦はPIXTAで販売中です。
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話の中で、食事のマナーが良くない場面が出てきますが
キャラクターを表現する設定として、ご了承ください。

本文に交霊術が出てきますが、絶対に真似をしないでください。
何かあっても、作者は責任を取れません。
自己責任でお願いします。

・青色の()は、私(主人公)の気持ちや考えていることです。
・灰色の()は、作者による注釈、フリガナです。
・太字の「」は、複数人の声や大きな音です

目次

夕食の準備

幻覚について、再び

ルナ vs 私

イメージで物体を作る方法

次回

2024年 6月 28日、更新しました。

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(c)虹色らいん - イラスト素材 PIXTA -

夕食の準備

私は本当は、食堂で川原さんや高森くんたちと食事をしたかったのだ。
食堂で一緒に食事をすると、気軽に色々なことがきけて、周囲の人々の話からも
色々な情報が入ってくる。

階段を下りて、あらためて食堂を眺める。
長方形の白いテーブルが、縦に2列、横に3列、並んでいる。
その長い辺に、椅子が3脚、向かい側にも同じように3脚ある。
テーブルとテーブルの間は、人が1人通れるぐらいの間が空いている。
(下記のイラストを参照)

食堂のテーブルと椅子の配置図、1階の見取り図と合わせて-

寮の1階の見取り図と、食堂のテーブルと椅子の配置図です。

機械室の前のテーブルで、姫子さんたち食堂で働いている中年の女性たち4人が遅めの
夕食を取っている。
さっそく部下たちが、テーブルを動かして1つの大きなテーブルにして、3階1番奥の
部屋から持ってきた、ほとんど手をつけていない料理を置いていく。

姫子さんたちが、校長先生の所に来て
「校長先生、あたしたち、お休みを明日もらいたいんですけど。」
「いいですよ。A地区が安全になったからね。」
気軽な感じで答え、姫子さんたちが笑顔になった。

ナナとミミが他の女性にスープ鍋を温める方法をきき、藍白とタガメがスープ鍋を抱え、一緒に
厨房の中に入って行った。

しばらくして、スープのいい匂いが漂ってくる。
私は校長先生に
「明日の食事は、どうするんですか?」
「朝は簡単なパンとスープで、昼と夕食はみんなでやれば、なんとかなるでしょう。人数も少ないですし」
「A地区の方ばかりですか? 厨房で働いているのは?」
「そうよ。A地区は食べ物を育てて、それを料理して、みんなに提供するのが役目なの。」と姫子さん
「A地区に行けない間はなんとか頑張ってたけど、これで、ようやく休めるわ。」と、別の女性が嬉しそうにする。
「夕食の時(16章-1)、見せてもらったけど忙しそうでしたね。」
「そうね・・・少しでも生徒たちに手伝ってもらいたいんだけどねーB地区やC地区の人たちにも。」
そう言いながら姫子さんら女性たちが、気まずそうにしている校長先生と市長さんに、じろりと目を
向ける。

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幻覚について、再び

スープ鍋が来て、姫子さんたちもスープを1杯飲むことになった。
私たちも席に着き、夕食を食べ始めた。
バッカスが機嫌良く酒をグビグビ飲みながら、私の所に椅子を持ってやって来て、それをドカッと置いて座り、片足を曲げて座面にのせる。そして
「澪木がさ、幻覚だって言うなら、どこどう幻覚だって言うんだよ。」(16章-1)
私は少し考え込み
「じゃバッカスは、どんな幻覚を視たの?」
その近くにサイケとメロディー、ハピラキがパンや果物、料理を小皿にのせて、食べながらやって
来た。
バッカスは空中を見て
「俺がお前の後について、あの絵の前に来て、しばらく絵をじっと見てたらな、突然、頭に浮かんで
きたんだよ。こう持って(スプーンの先を下に垂直に向けて、握りしめる。)これを鉛筆とするだろ?
で、ハピラキ、持てよ。」
ハピラキが、スプーンの下の方を片手でバッカスの手の上に重ねるように、握りしめる。
「で、こうやって動かしながら」
(ハピラキも一緒に)地獄姫様、地獄姫様、どうか出て来て、私たちの知りたいことを教えてください。」
「パキッ!」
鋭い音を立てて、スプーンの柄が、二人の握りしめた所から真っ二つに折れた。

その様子に、周囲の人たちは呆然とし
「バッカスの力が、強いのよ。」とアルテミス
「バッカス様の力でスプーンが折れた、ということですか?」とサイケ
「それ、本当はとても危険なのよ。力を持つ者が使うと魔の力を取り込んで、そういう風にスプーンが壊れたり、地獄に穴が空いたり、するんだから。」(この小説内でのルナの考えです。)
「そうか・・・これが降魔術だ。」と、マーズちゃんが私を見る。
私はうなずき
「それで、その後、何が起こったの?」
バッカスは、粉々になった手の中のスプーンを床下に、パラパラと払い落としながら
「えっ?・・・えーと・・あーピンクのイモ虫がでっかくなって、これぐらい?」
立ち上がると、両手を上に上げて大きく広げ
「で、それが由美ってやつを追いかけた。」
(ちょっと違うな・・・)本当に?」
私は、彼女の部下たちにきいてみる。

メロディーが
「僕が視たのは、そのでっかいイモ虫が急に出てきたから、その、由美ちゃんは逃げ出した。全速力で」
「どこから、どういう風に逃げたの?」
市長さんの横で、クリスが必死でノートに書いている。
(さすが、キングの秘書、後で見せてもらお。)
「えっと・・・・」
メロディーは考え込み
サイケが
「教室から階段を走って飛んで、全速力で生徒用の下駄箱の前の廊下を後ろを見ながら駆けて行って
職員用の下駄箱の上に穴があったからポケットから紙を取り出して、その穴の中に右腕を突っ込んだところで、イモ虫がどかん!!てものすごい勢いでぶつかってきて、千切れた右腕だけが穴の中に残った。」
「ハピラキも一緒!」
「僕も!」とメロディー
他の部下たちからもどよめきが起き、互いに確かめ合っている。
姫子さんら食堂の女性たちは、呆然としている。

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ルナ vs 私

市長さんが校長先生に
「信じられますか?」
「あの穴ですよ!」
クリスの記入する手が止まっている。
「どの穴ですか?」と私
校長先生は気まずそうに
「えー実は、間違えて換気口の穴を職員用の下駄箱の上に開けてしまいまして」
「間違いですって、マーズ様!」とトカレフ
アーサーがルナに
「なぜ、あんな所に穴があったのか、不思議だったんです。」
「間違えただけ、みたいですね、姫」とヒアキッソス
「そうね。」とフローラ

「私も見てみたいなあ。ねえ、澪ちゃん。」と、ルナがニッコリと私を見る。
私は意地悪そうに
「月って、昼出るの?」
「あらっ、昼間の月って見たことないかしら?」
「うん、ほとんど地下にいるから・・・ところで、私はどっちでも良いんだけど、そういうことは。」
「そんなことないわよ。実際に話をきくのと視るのとじゃ、大違いよ。」
「私と行っても、視れないかもしれないよ。」
「ええっ! そうなの? アルテミス。」
「あぁー、とばっちりが来ちゃったわ・・・もう、あなた(私)が変な誤魔化(ゴマカ)し方をするから
変なこじれかたになってるじゃないのよ!」と私を指さす。
「嘘は言ってない。」
「幻覚なのか?」とマーズちゃん

私はうなずき
あれは、由美ちゃんの強い想いがあそこに残っているだけ、それを、みんなが目の前で起こって
いるように錯覚しているだけ。だから実際に過去に起こったことなんだけど、ただ、それを視た通りに
とらえるのは簡単。でも問題は」
「由美さんの強い想い、ですか?」とクリス
「そう、由美ちゃんの強い想い。つまり由美ちゃんが、みんなに何か伝えたいことがある、ってこと。」
「あっさり認めなさいよ。」とアルテミス
私は無視して、ルナに
「だから、あの時から、かなり時間も経ってるし、みんな視てるから、だいぶ薄くなってるかもしれない。」
「なるほど・・・けっこうよ。月の光は幻覚を視せるのよ。楽しみね。」
ルナが怪しげな笑みを浮かべている。

副隊長が
「思念体ですか・・・。」
「うん・・・みんな初めて? あーいうのって・・・。」
「いや、初めてでは、ないですね。・・・覚えてないですか?」
私はうなずき
「私が来たら、起こった?」
部下たち3人とも、うなずく。
(だから4人とも待っていたのか(13章-1)・・・なんだったっけ?)
「色々ありすぎて覚えてない。」
ハハハッ。
3人とも笑っている。
「その時って」
「バッカス様、大丈夫ですか?」とサイケ

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イメージで物体を作る方法

バッカスは呆然と、粉々になったスプーンの破片の跡が残った両手を眺めながら
「コツがわかった。」
「えっ!?」と、彼女の部下たち3人
「力の入れ方のコツ?」と私
「そうそう、それだよ。力の入れ方だよ。今までよくわからなかったけど、こうすれば良いんだ。」
今度は右手で、食事用のナイフを握った。そして力をこめる。
「あれ?」とバッカス
何も起こらない。
私は「フッ。」と笑って
「力の入れすぎ。上手くしようとして、余計な力が入っちゃってる。」
「くわー! くそっ! 難しい!」
いつの間にか、女神たちと部下たちに他の人たちも、スプーンやナイフを握って同じことをやっている。

私の部下たちは笑い
ヨシツネが
「俺、刀、作るのに、1年かかりましたから。」
「それから自在に使うのに、3年ぐらいっすかね。」とアオバ
「マジで?」とバッカス
副隊長も笑顔でうなずいている。
サイケが私に
「私にもできますか?」
「んー私たちみたいに刀を出すよりは、何か得意なもの、音楽の、楽器とかって出せる?」
「いいえ、あーでも理屈は同じですか?」
「うん、それなら僕にもできそうだ。」とメロディー
「ギター、出してみたいな。」とハピラキ
「うん、自分の好きな物の方が、よりイメージしやすいよ。」と私
マーズちゃんとその部下たちも、うなずいている。
「え、お前ら、刀、好きなのかよ?」とバッカス
「好きと言うよりかは、必要にかられて、ですね。」と、ヨシツネは苦笑い。アオバもうなずいている。

横から、ルナが甘えた声で
「ねえ、澪ちゃん、やっぱり、今から行ってみたいな。」
「だから、月って昼出るの?って聞いたのに。」
「まあ、意地悪ね。」
目は笑っている。
「いいよ。」
「まあ、嬉しい。」
ルナが立ち上がる。と同時に、彼女の部下たちも嬉しそうな表情で立ち上がった。
「いいの?」とアルテミス
「うん、どんな感じになるのか興味あるし・・・。」
私も立ち上がり、私の部下たちも立ち上がる。
ルナは、両手を前で組み嬉しそうに
「ほんと、月の光って幻覚を視せるのよ。」
「お、俺も行く。」
バッカスとその部下たちが立ち上がり、他の人たちも、ガタガタと音をさせて立ち上がった。

アルテミスだけが慌てた様子で立ち上がり
「ちょ、ちょっと待ってよ! あなたたち二人が合わさったら、何が起こったって不思議はないのよ。」
「んー絵の所まで行くつもり?」と私
「そうよ・・・・・?」
ルナは、「何が言いたいんだ?」という風に首をかしげる。
つられて一緒に立っている(?)校長先生に
「絵の前の部屋に、木花 咲子さんが住んでるって、きいたんですけど。」
「そうですよ。・・・あー大丈夫でしょ。まだ寝るまで時間がありますから。」

出入り口の扉に向かって、私を含めたその場にいる全員が歩き出した。

ピンク色のイモ虫(ヒドル)についてのページはこちらをクリック

幻覚の全文は第13章ー1を参照してください。

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(c)虹色らいん - イラスト素材 PIXTA -

次回
第18章ー第二都市(中庭、学校)
1,「2匹いたのね。」

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