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小説3「地獄の王」

第1章、王宮
1,「朝霞(アサガスミ)をイメージしております。」

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()の中の灰色の文字は、作者による注釈、フリガナです。

目次

プロローグ

月1回行われる王宮での定例会議

この星の王キングとその部下(執事)クリス

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プロローグ

悪いことは重なるものだ。
いいことも同じように重なるのだけど、嬉しいことは何回でも起きて欲しいと思うし苦にならない。
しかし、悪いことは「もうこれで終わりにしたい」と思うし場合によっては周りに影響することも
あり大変だ。
自分自身が呼び込むということもあるのだけど・・・

月1回行われる王宮での定例会議

その日、私は月1回行われる王宮での定例会議に出席していた。
私の目の前には、木でできた大きな楕円形のテーブルがあり、その向こうには、バタークッキーや
たっぷりの生クリームを挟んだシュークリーム、チョコレートをのせたエクレア、濃厚そうなチョコ
レートケーキなどが大皿にきれいに並べられ、それが5~6枚適当に間隔を空けて置かれている。
お菓子がのった大皿のすきまを縫うようにして、水彩風の花の絵が描かれ金で縁取られたポットと
同じ柄と細工が施されたカップと皿がセットで置かれ、その間には、持ち手に同じ花の絵が描かれた金色のティースプーンやケーキ用のフォークが置かれている。
テーブルの中央には、食器と同じ花の絵が描かれた花瓶に、色とりどりの花が生けられている。
私の手前には先程、手伝いの者に切り分けてもらった青色から水色、白色、橙色、ピンク、再び水色、青色へと変化していく美しいグラデーションの上に、薄っすらと白い砂糖がかかった羊羹と黒文字の
楊枝が1本、黒漆塗りの長方形の小皿の上にのっている。その右手には、湯気をたてている黄緑色の
抹茶が入った、底がぽってりと丸くなった茶碗が置かれている。その茶碗の地肌はクリーム色で、正面には色鮮やかな1本の扇子が描かれている。

手伝いの者が私に
*朝霞(アサガスミ)をイメージしております。」
と羊羹の説明をしてくれる。
私は「へぇ~」という顔をしながら、楊枝を手に取りそれに差し入れた。

この星の王キングとその部下(執事)クリス

花が生けられた花瓶の向こうには、緩やかなウェーブがかかった短い金髪に紺色の目をした
背もたれと座面に赤いシートが貼られ、金の装飾が縁に施された肘掛け椅子に、偉そうにふんぞり返り
足を高々と組んで座っている。

私は半分軽蔑の意味を込めて、キングと呼んでいる。根は良いやつなのだが、いくぶん自分以外の
人を見下しているところがあるからだ。

彼の能力は、背後にある次元ポケットから無尽蔵に武器やら生活用具など形のあるものなら、なんでも出すことができる。
だから、この星の王でいられるのである。

私の力と似ているところはあるが、私の場合は次元ポケットなんてものはなく、自分のイメージを
形にしているだけである。

キングの少し右側の後ろに座って会議の内容を議事録に記入しているのが、男性の部下のクリス
口元を覆う程の白ひげをたくわえ、執事のようにピシッと白いスーツを上品に着こなしている。
キングの代わりに王宮の全てにおいて目を配り、常にキングから1歩下がって控えめにたたずみ
出しゃばっている所を見たことがない。
その上、キングが時折出す質問にも的確に答え、手伝いの者の信頼も厚いように見える。

*朝霞(アサガスミ)…朝に発生する白いもや(参考:広辞苑)

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
次回からは、テーブルの向かって右側(キングの左側)に座っている女神たちと、その1番目の部下たちから順番に紹介していきます。

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次回
第1章ー王宮
2,「特に変わりありません。」

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