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小説3「地獄の王」

第14章、第二都市(3階1番奥の部屋)
1,「普通に使って、引き千切れる物じゃないんですよね。」

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ライガは何匹いて、どこに行った

女神と部下たちが視た幻覚については、前回を参照してください。

ライガについては、用語集にページを作りました。

・ 青色の()は、私(主人公)の気持ちや考えていることです。
・()の中の灰色の文字は、作者による注釈、フリガナです。
・ 太字の「」は、大きな声や音です。

目次

前回(幻覚について)の感想など

千切れた蝶番

蝶番の説明

「どの部屋に泊まるの?」

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2024年 3月 22日、更新しました。

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前回(幻覚について)の感想など

寮の1階と3階を合わせた見取り図

寮の1階と3階を合わせた見取り図です。

アルテミスは帰った。
私と女神たち、キングと部下たちは、校長先生と市長さんを先頭に、寮に戻る。
入って左側の階段を上っていると
キャー!!
ナナとミミの叫び声が、聞こえてきた。
いち早く、藍白とタガメが駆け上がって行く。

私は、たいしたことなさそうなので、先に行く2人にまかせた。
校長先生が振り向き、私に
「良いんですか?」と、駆け上がって行く2人を指差す。
私は苦笑いしながら
「たいしたこと、なさそうなので」
マーズちゃんも
「イモ虫に殺された死体が見つかった時に、くらべたらなぁ。」
その下にいる部下たちも、笑いながら階段を上っている。

藍白が、ついて来るのがタガメだけなのと、さっきの会話が耳に入り
「ええ!?」と、階段の手すりから下を見下ろし
「先に行って話を聞いておれ、わしはさっきので、とても疲れた。」
キングが自分の肩をマッサージし、私と校長先生と市長さん以外の全員が笑い出す。
「何がおかしいの?」と私
「いや、ほら、もう笑うしかないだろう、あれは。」とマーズちゃん
「人智を超えた、というか、もう手に負えないというか、ですよね、マーズ様」とトカレフ
(神じゃないのか? お前たち)
「まさか澪木、見てないってんじゃ・・・」
バッカスの言葉に笑いが止まり、見上げて私に目を向ける。
校長先生が立ち止まり
「何か、あったんですか?」
市長さんも不思議そうな表情で立ち止まる。
私は笑いをこらえながら
「本当に何が、あったんでしょうね。」と言いながら、階段を駆け上がっていった。

千切れた蝶番

寮の3階1番奥の部屋の見取り図

寮の3階1番奥の部屋の見取り図です。
寝室と廊下のドアがありません。

奥の部屋に行くと、寝室のドアがなく金具だけがついている所で、金属の工具箱を床に置き、金具を触(サワ)って見ている中年男性がいた。
先ほど、中庭でマーズちゃんの言葉に拍手をしていた赤い髪のおじさんだ。

近くに行くと、オフィーリアにしがみついているナナとミミが
「澪様!」
「そちらの殿方が、勝手に入ってきて!」
「僕たちの知らない間に」と、二人の横にいるヒマワリ
私の後ろから、藍白とタガメが来て
「どうしたんだ、お前たち!」と藍白
「ですから、そちらの殿方が・・・」とナナ
「澪ちゃん! 私、見たのよ、そこの校舎の下駄箱の前を、由美ちゃんが全速力で走り抜けるのを・・・
それからのことも見たわ。」
オフィーリアが興奮し、半ばうっとりした様子で宙を見る。
「「「えっ!?」」」
ナナ、ミミ、ヒマワリがビックリするも、自分たちも見ている藍白は
「姫も見ましたか? あれが『ことの起こり』、だったんですね。」
「ええ。」
タガメもうれしそう。
ナナとミミ、ヒマワリは、まったくわからず呆然と、興奮している3人を見ている。

私は、赤い髪のおじさんの横に片膝を立てて座り
「金具を見に来てくれたんですね。」
「校長先生から話を聞いてね。」
「ドアがなくなった状況のことは、わかりますか? 誰かの手ではずされたとか」
私の背後から
「アルケじゃないか、さっそく、すまないね」と市長さんの声
「いやー女神様の依頼とあっちゃ・・・特にそちらの赤い髪の女神様なら・・・」
と言って、恥ずかしそうにマーズちゃんの方を見る。
(それで、マーズちゃんに拍手をしてたのか・・・)
「別に俺が頼んだんじゃねえよ。」と、マーズちゃんは照れている。
その後ろでは、キングが
「ほーここが、そち達の部屋かー」
クリスとルナの部下たちも、物珍しそうに見回している。
「こちらは、B地区の区長をしているアルケさんです。」
校長先生が、赤い髪のおじさんを紹介してくれる。
フローラが
「B地区の区長さんとおっしゃいますと、C地区の区長さんもいらっしゃいますの?」
「それが私です。」と、市長さんが笑顔で自分を指差す。
(あー、そういうことね。)と私だけでなく、女神たちや部下たちもうなずいている。
「それで何かわかったかい? アル。」と、市長さんが気軽な調子で声をかけた。

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千切れた蝶番

千切れた蝶番
奥に見えるドアは、脱衣所のドアです。

蝶番の説明

声をかけられた赤い髪のおじさん(以下、すべてアル)は、ドライバーで金具をはずし
「これは、蝶番(チョウツガイ)と言いましてな・・・」と言いながら脱衣所のドアの所に行き
「このように、もう片方にも同じ物がついておりまして、蝶のように羽を広げたり、閉じたりして戸を開け閉めできるようにする物です。で、見た所、片方が引き千切(チギ)られておりましてな」
私に、片方だけになった蝶番を渡してくれる。(上のイラストを参照)
(なるほど、確かにあったはずの、もう一方のつなぎ目の部分の金属がねじれている。)
私は、それをマーズちゃんに渡し
「普通に使って、引き千切(チギ)れる物じゃないんですよね。」
アルは驚きの表情で
「もちろんですとも、こう何度も動かしますから、丈夫にできてませんと・・・」と言って、脱衣所のドアを何回も開け閉めする。
(やはり、ライガがこのドアを引き千切って、奥の寝室に行きベッドを食べた、というのが妥当だろうな・・・じゃ、そのドアはどこに?)
校長先生が
「ドアをつけますか? 大工のカーペンターに頼めば、できますけど・・・」
「しばらく考えます。・・・あの、ドアって、どっち側に開くようにつけられていたか、わかりますか?」
「あーそれは廊下の方ですね。廊下側の壁と合わせますから・・・・ほら、蝶番も廊下側についているでしょう。」
アルは、再び部屋の方へ行き、蝶番の後を指差す。
「じゃ、イモ虫は、そこ(和室)からここ(寝室)までだと、すんなりいくな。鍵でも掛(カ)けていたのか?」とマーズちゃんは考え込む。
「いえ、鍵の金具がついてないですからね。もし、鍵があったとしたら、反対側にも鍵の金具がついていないといけませんから・・・鍵もおつけしましょうか?」とアルはニッコリ笑う。
(マーズちゃんだとサービスいいな。閉じ込めたのは和室かと思っていたけど、案外、寝室かも・・
えさもあるし・・・。)

「いや、それは、また考えとく。・・澪木、なんかあるか?」とマーズちゃん
キングとルナの部下たちが退屈しのぎにウロウロし、和室にまで入ってきたりしている。その行動に
オフィーリアとその部下たちはびっくりし、廊下の方に出てきた。ヒマワリは、フローラの後ろで、その様子を見ている。

ナナが
「私たちのお部屋、ベッドが2つしかありませんの。」
「それも鉄のベッドですわよ。」とミミ
「へえ?」とアルは不思議そうな顔をする。
「実は、木製のベッドだけが、イモ虫に食べられた、らしいんだよ。」と校長先生
「ドアも?」とアル
(そっか、食べられたということも考えられるのか・・・金具も?)
「ペンキを塗って木で、できているように見えないと、食べないようですわ。」とフローラ
「ほお、じゃ、これからペンキを塗りましょうかね?」とアル
キングが横から
「木で作られたベッドが欲しいなら、わしが出してやろうぞ。」
「いえ、いいです。」と私、女神たちも首を振っている。
「おぬしらなあ・・・」と、キングは渋い顔
(みんな、私のせいで幻覚が見えたんだと思ってないんだったら、それでかまわない。能力のないふりをするのも面白そうだし・・・)

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「どの部屋に泊まるの?」

「ありがとうございました。」
校長先生と市長さん、アルが帰る。
私はキングに
「どの部屋に泊まるの?」
「おっ・・・えっと・・・」
キングが、この部屋を指差すも、すかさずマーズちゃんが
「ここは、だめだぜ。」
「まだ、何も言っとらんだろうが!」
「王、私たちのお部屋をお使いになさっては、いかがですか? 私たち、オフィーリア様と一緒のお部屋にしようと思いますの。」とナナ
「ナナ、ミミ・・・」
オフィーリアは困った顔をし
「あんな・・・ライガのえさになるのは、ごめんですわ。」とミミ
「ほんとですわ! もし、ゆうべ、このことがわかっていたら・・・。」とナナ
(よかった、あの時、二人部屋のドアを開けないで・・・)(8章-9)
トカレフが
「マーズ様、私たちも・・・この辺で良いので・・・・」
和室の隣、花柄のカーペットが敷いてある部屋(廊下? 上から2番目の見取り図を参照)を指し示す。
マーズちゃんは、腕組みして考え込み
私の部下たちは相談し、副隊長が
「王、よろしかったら私たちの部屋にどうぞ。ベッドがありませんので・・・」
トカレフたちの部屋に移るつもりらしい。
一方で、ローズとヒマワリはフローラに、ハピラキはバッカスに、ナナとミミのように一緒に寝たいと駄々をこねている。しかも、ライガのことがあり、まったくあきらめる様子はないらしい。
(これは再度、配置換えをしたほうが良さそうだ。ルナの部下も増えたことだし、クリスは別々だろうな・・・)

私はふと、二人部屋がどうなったのか気になり、話し合いをしているみんなを尻目に、外の廊下に出てみた。

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第15章ー第二都市(寮の3階、二人部屋)
1,「由美ちゃんも、地獄姫様に何かお願いがあったのかな?」

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