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小説3「地獄の王」

第19章、第二都市(学校の2階、合宿部屋)
3,「昔、陰陽師というのがございまして」

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・青色の()は、私(主人公)の気持ちや考えていることです。
・灰色の()は、作者による注釈、フリガナです。
・太字の「」は、大きな音や複数人の声です。

目次

陰陽師と式神

現実の夜と幻覚の昼

明日の予定と、ピンク色のイモ虫

『並木道の植物が枯れていたのは、なぜか?』

結界の専門家、再び

次回

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(c)虹色らいん - イラスト素材 PIXTA -

陰陽師と式神

校舎2階の全体の見取り図

校舎2階の見取り図です。
登場人物たちは、向かって右側の合宿部屋にいます。

合宿部屋の見取り図

合宿部屋の見取り図です。
長机と布団の配置は、前回と同じで、ほとんど変わっていません。

「昔、陰陽師というのがございまして、その者が、天地の気を使い、部下として式神を使い、色々な事を
なさったと、きいたことがあります。魔術師とかがいた、はるか遠い昔の話でございますよ。」とクリス
オフィーリアが
「魔術師だったら、きいたことがありますわ。お姉様(トリトン)がお話しして下さいました。」
「古い昔話だろ。」とバッカス
「はあ、」と校長先生
(陰陽師に頼みたいことでもあるのかな?)
「陰陽師と知り合いになりたいのかよ?」とマーズちゃん
「いえ、そういうわけでは・・・・」
校長先生は不定するも、そのようにしか見えない。
「校長先生は、結界や式神を使ってみたいんですか?」と私
校長先生は照れたように
「あっ、はい。本で読んだ時に興味がわきまして、」
(嘘だな。必要にかられてってのもあるのかな? まあ、いいや・・後はルナ待ち、ということで・・・・。)

私は、チョークを置いて
「パンパン。」と指先の粉を払う。
そして振り向き
「ルナ、ちょっと、ききたいことがあるんだけど」
「なあに?」
ルナが私を見ると同時に、クリスが校長先生に
「式神は、どういう字を書くのですか?」
「えーと・・・・。」
校長先生は、私に目を向ける。(結局、知らないじゃん。)
「おい、うちの隊長の質問が先だぜ!」とアオバ
「いいよ。」
私は再び黒板の前に行くと、『式神』と書く。

「他は?」
「オンミョウジ、をお願いします。」と校長先生
『陰陽師』と黒板に書く。
「へえーあんな字を書くんだ。」とマーズちゃん
「陰(イン)と陽(ヨウ)ですわ。」とオフィーリア
他の人たちは、メモに書いたりしている。

黒板の式神と陰陽師

キングが
「お、おい式神ってのは何か? こいつら(部下)のような者を言うのか?」
「私もくわしくは知らないけど、何かの精霊を呪文か何かで従わせるってのは、聞いたことがある。」
古い過去の朧(オボロ)げな記憶をたぐりよせながら、自信なげに答える。そもそも私は、式神なんて者を持ったことはないし、呪文で部下たちを従わせたことはない・・・(どんなだったけ?)
マーズちゃんが
「俺たち神には、元々自然に付いているものだから必要ないけど、人間は自然とはいかないから、呪文とかで従わせるんだろ? で、その式神も、本、読んだだけとか、生半可な努力じゃ出来ないんだよな。」
「そう、その通りよ。」とアルテミス

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現実の夜と幻覚の昼

私は話しを変え
「それでねルナ、校舎の中でライガを探している時に、昼か夜か、わからなくなる時があって、屋上へ
行くと、ルナとかフローラとかみんないて、夜空だし夜だと思うんだけど、中に入ると昼だったりして
ごっちゃになること、あるのかな?」
「俺もっすよ。」とアオバ。副隊長やヨシツネ、藍白、タガメもうなずいている。
「もちろんよ。(今晩は)三日月だから隅々まで月の光に満たされる、というわけにはいかないもの。
あと2週間で満月だから、満月だったら、もっと完全に再現できると思うわ。」
「2週間か・・・ちょっと長い。ある程度、見つける所までいって、後は確認するぐらいでいきたいな・・・。」と私
「だなあ」とマーズちゃん。部下たちもうなずいている。

キングが
「お前、『幻覚にとらわれて見失うな』と言っておったのに(16章-1)、お前の方が幻覚にとらわれて
現実を見失っとるではないか。」
「あー校舎内を、走り回ってライガを探し回ったこと? それとも、満月で確認しようとか言ってること?」
「あなた、私の幻覚は信用できないって言いたいのね。」とルナ。カチンときたようだ。
「えっ!? だから、こいつが・・・」
「まあ! さっき澪ちゃんに散々言われたからってネチネチと、そんなに、澪ちゃんの言うことが気に入らないなら、さっさとお部屋に帰りなさいよ。『余(ヨ)は寝る』、じゃなかったの?」
「お、おい・・・。」
キングはショックの様子。
しかたないので
「まあまあ。」
私がルナをなだめる。
マーズちゃんが
「あの腕の傷口見て、ウットリしてるのはお前だけ。実際にあと2匹、ライガがどっかに行ったんだから、幻覚を基に、ライガの居場所を早く探し出そうって言ってんだろ。体が、前に見たのより大きくなってるから、実際のところ、どうなのか銀河連合が計算し直してるって、」と言って、アルテミスを見る。
「ごめんなさいね。予想外のことだから、計算に手間どってるの。」と、アルテミスは申し訳なさそうな様子
「澪木、早まることはあるのかよ?」とマーズちゃん
「んーあるかもね。だから急いでいるんだけど・・・校長先生。」
「はい。」
「明日、校舎内の案内をやめて、学校の外の周りの亡者たちを制圧します。」

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明日の予定と、ピンク色のイモ虫

「え、A地区は?」と校長先生
「A地区行った後。」
「わ、わかりました。」
「それで、第二都市の地図ってありますか?」
「あっ、それだったら、市長が持ってますよ。」
「じゃ、明日でいいので。」
「わ、わかりました。」
「何か質問ある?」と、私は周りを見回す。
「制圧する時間は、どれぐらいを予定していますか?」と副隊長
「あー校長先生、寮から向こうって、どうなっているんですか?」
「あーでしたら・・・。」
校長先生は立ち上がり、黒板に第二都市のおおまかな地図を描いていく。

校長先生が黒板に書いている図

校長先生が黒板に書いている、第二都市の地図です。
青木先生が指でさしている部分が、道の両側のBとCの辺りです。

「けっこう広いですよ。」と青木先生
「寮から向こうは、何があるんですか?」と私
青木先生は、校長先生が描いている地図の、道の間を指でさしながら
「住宅街に商店街、生徒たちの家もあります。で、その間に、あーあれが B ですね。昼、見に行ったら
けっこうな高さの崖に囲われていてビックリしたんですけど、それから・・・上にある B より2回りぐ
らい大きいのが、C です。市役所とかがある中心部って、いうんですかね。それから先は、森というか
山になってまして、それほど高くはないんですけど・・・そういえば、あそこでピンクのイモ虫を」
ええー!?」と、女神たちと部下たち(おおー!)
「ヒドルですわ。」とフローラ
「どの辺にいたんだよ。」とバッカス
青木先生は立ち上がり、赤いチョークで
「えーと、この辺ですね。」
上の方の山を描いた真ん中辺りに、❌と書く。

校長先生が黒板に書いている図に青木先生がXを書き足したイラスト

「それで、そのイモ虫は?」と私
「教室で飼ってました。3ヶ月ぐらい前かな? でも、あの排水溝から出てきたイモ虫より、かなり小さかったですよ。」
「それです。何かのひょうしに大きくなったんです。アルテミス、銀河連合に頼んで、明日、捜索してもらえる? みんなヒドルの乗ってきた隕石って言われても、どんなのか知らないし・・・。」
わあっ!
アーチャーが再び急に現れ、部下たちが驚いている。そして彼女は、黒板の❌を見ている。
「わかったわ。」とアルテミス
アーチャーも、私を見てうなずく。

私は部下たちと女神たちを見回し
「私たちは、B と C 以外の亡者たちを、地獄に送り返すのに全力を注ぐ。」
はい!
「明日、A地区に行くのは・・・校長先生、A地区って、いつ頃から起きてますか?」
「早いですよ。農地ですから、夜明けとともに出かけても大丈夫でしょ。」
「じゃ明日、日の出とともに A 行って、B、C 以外はとりあえず全員(亡者たちを)送り返したいんで
計画は、明日言います。」
はい。
「それと、市長さんに地図をもらったら、キングに同じ物を3枚、出してもらってください。」
「地図ですか?」
「はい。」
「銀河連合は?」
「必要ないと思うけど。」とアルテミス
私がアーチャーを見ると、うなずいたので
「必要ないです。質問ある?・・・ないようだったら、解散。」

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『並木道の植物が枯れていたのは、なぜか?』

アーチャーは消え、みんな両手を伸ばしたり、あくびをしたり、布団の上でゴロゴロしたりと
動き出す。

クリスとアーサーたちが私の所に来て、クリスが代表してノートを広げながら
「澪様、申し訳ないのですが・・・・。」
「あーわかったことって、ドアが無くなった理由だけ、なんだよね。」
「はい、ライガが2匹いたからと・・・。」
「ちょっと、黒板に書き出してみる?」
「わかりました。」
クリスが黒板の前に立って、ノートに書かれた疑問を、そのまま書き写していく。

「じゃ、みんな、今まで出てきた疑問を言って。」
「でっかいライガは、どこに行ったのか?」とマーズちゃん
「なんで、あんなにデカくなったのか?」とトカレフ
「ピンクのイモ虫も、ですね。」と青木先生
「なぜ、誰が(合宿部屋に)結界を作ったのか?」と校長先生(こだわってるな。)

フローラが
「私、ずっと疑問に思ってたことが、あるんですけども、初めて、あの並木道を通った時、植物がとても
元気がなかったでしょ(5章-2)。あれ、ひょっとしてライガのせいだと思いますの。でも、澪ちゃんと私で元気になりましたでしょ。学校の中の悪い空気も澪ちゃんのおかげで良くなりましたし(5章-4)、つまり・・・ライガって、この近くにいるんじゃありません?」
「それはない、と思うわ。だって、渡り廊下の木々は元気だし、A地区の周りの木も枯れてないでしょ。もしライガが近くにいたら、それらの木も枯れると思うんだけど・・・。」とアルテミス
クリスが黒板に、『並木道の植物が枯れていたのは、なぜか?』と書いている。

?

黒板の左側の部分です。

フローラは、あきらめきれない様子で
「ヒアキッソスはどうでした? あの並木道の植物たち・・・。」
「姫、申し訳ないのですが、僕たちが来た頃には亡者たちが、たくさん出てきていて、都市の人たちを
体育館に避難させるのに精一杯だったんです。」
部下たち全員がうなずく。
「並木道を見る余裕は、ありませんでした。」とローズ
「はい。」と、ヒマワリもうなずく。
「お前らもかよ。」とバッカス
サイケとメロディー、ハピラキもうなずく。
「そうでしたね。」と校長先生
「私も気づいたのが、午後の3時半ぐらいで、職員室にいたんですけど、残っている生徒たちを寮の方に避難させて・・・」と青木先生
「寮の方で、何か気づいたことは、ありますか?」と私
「いや、何も。あいつら(亡者たち)が、寮の中に入って来ないように、生徒たちと一緒に椅子や机で
バリケードを作るので、必死でしたから・・・」と青木先生

「フローラの考えを聴いてて、思いついたことがあるんだけど、ライガとかヒドルもだけど、生き物って
警戒オーラみいたいなものを出すんじゃないかな。警戒オーラってのは例えなんだけど、生き物って臆病だから、自分の半径何mぐらいには、人や生き物を寄せ付けないように警戒してて、それが、あの並木道だったり、なんか私が思うに、結界って難しいものじゃなくて『私の周りに近づかないでね』っていう
オーラだったり、そのドアや壁だって、いってみれば結界だよね。外と内を隔(ヘダ)てる。つまり」と、私が言ってる途中から
「だから、わしが言ったであろう。これはただの暗闇ではないと。あの暗闇はライガの作り出した警戒オーラであり、あの中に、ライガがひそんでおったのだ。」
「だから、それはねえって。もしライガがいたら、俺でも感じるし、澪木が来て電気がついたけど、ライガは、いなかったじゃねえか。いたら、校長とか俺たちも食べられていたんじゃねえのかよ。」とバッカス
他の女神や部下たちも、うなずいている。
「んー」と、キングは考え込んでいる。
(たぶん、キングの感じたことは正しい。性格はちょっと難があるが、次元ポケットを使いこなす力を持っている。また、バッカスも正しい。音楽の女神であり、女神たちの中でも、人一倍、鋭敏な感性を持っている。)

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結界の専門家、再び

校長先生が
「あの、ちょっとよろしいですか? 先程の結界の専門家のことで」と、また蒸し返す。続けて
「あの、ルナ様が最初に、『この星の人じゃないわよ。』って言った後に、『元々、この星の人なんだけど』(19章-2)と言った意味が、わからないのですが・・・・。」
「あーそれはね、私たちがいなかった時代の人で、その時は人間だったのよ。でも元々、神と同じぐらいの力を持っていたし、亡くなった後も、天上の神々から慕われてて、宮殿も持ってて、神と大差ないぐらいの人よ。ね、澪ちゃん。」
ルナが、ニッコリと私に微笑み、「へえー。」と周りから声が上がる。
「何が?」と私
「えっ? だから・・・」
ルナは戸惑い
「ごめん、私、よく覚えてない。」
「えー!? アルテミス、聞いた?覚えてないって、宇宙で1、2を争う美貌なのに!」
「だから、他人事のように聞いていたのね。」とアルテミス
「へえー」と言ってるのは私だけで、周りは「すごーい、見てみたい!」と興奮している。

「うちの隊長と、どういう関係ですか?」と副隊長
「・・・言っていいのかしら?アルテミス」とルナ
「んー言っとくけど部下じゃないわよ。弟子よ。弟子。」とアルテミス
「なんの?」と私
アルテミスは目をパチパチさせ
「んー澪ちゃんが思い出すまで、黙っておくわ。」
「うん、わかった。」
「しかし、宇宙で1、2を争う美貌って、どんなだよ?」とバッカスは想像し
「ほんとですね。ジュル・・・。」
ハピラキが、口のよだれを拭(ぬぐ)う。(?)
「ヴィーナスと争うぐらいか?」とキング
「そうそう、ってキング、会ったことあるの? ヴィーナスに」とルナ
「ないぞ。ただ、ヴィーナスが一番美しい、と聞く。」
「あー愛と美の女神だから・・・ただ専門家さんは、『愛と美』とは、まったく無関係よ。」とルナ。
アルテミスもうなずいている。

「みんな、眠たかったら寝ていいよ。」と、私が言うも
「澪ちゃんこそ、寝なさいよ。 あなたが寝なかったら、部下の人たちも、みんな寝ないわよ。」とアルテミス
「星と月は、夜の間、照らし続けるものよ」
ルナが立ち上がり、部屋の電気を消していく。
黒板の前の電気は、そのまま残した。
「うん。」
私が、素直にアルテミスのそばの布団で横になると、部下たちもホッとした表情で、私の近くで
横になる。
アーサーたちがルナに
「お先に失礼します。」と言っているのが、聞こえてくる。
オフィーリアは、いつのまにかナナとミミに布団を掛けられ、心地よい寝息が聞こえてくる。バッカス、フローラ、マーズちゃん、キングも、いつのまにかウトウトと眠りについている。
私も、心地よい眠りの中に落ちていきながら
(そういえば、『結界って・・・そのドアや壁だって、言ってみれば結界だよね。』という言葉を、前にも言ったことがある。・・・いつだっけ?・・・・。)
思い出そうとするも、私の前で、私の話を5、6人が聴いている情景が頭に浮かぶのだが、顔が真っ黒でどうしても思い出せないのだった。

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(c)虹色らいん - イラスト素材 PIXTA -

次回
第20章ー第二都市(学校の合宿部屋と屋上)
1,「旅の果て、手にしたものは」

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