中庭周辺の見取り図です。
文中に出てくるゴミ袋は寮の左側にあります。
第18章、第二都市(中庭)
3,「初めてだそうよ。ヒドルもだけど、あんなに
大きいのは」
・青色の()は、私(主人公)の気持ちや考えていることです。
・灰色の()は、作者による注釈、フリガナです。
・太字の「」は、複数人の声や音です。
目次
2024年 12月 29日、更新しました。
千切れた蝶番を探す
私は校長先生に
「この辺のゴミって、まだありますか?」
「ゴミですか? あっ、千切れた金具を探すんですね。アル!」
B地区の区長であるアルケさんが来る。
「この辺に落ちていた金属のゴミって、どこに置いたかな?」
「それなら、あの辺に」
寮の右手(男性の部屋の方)を指差す。
寮の壁に沿わせるように、大きく膨らんだ白いゴミ袋が4個から5個ほど置いてある。
「3階の奥の部屋の蝶番の半分が、この辺に落ちていたかもしれないので、あの(白いゴミ袋の)中を探したいんですが。」と私
「いいけど、かなりあるよ。」とアルケさん
みんなでゴミ袋を中庭の中央に持って来て、中の金属類の破片や釘などを地面にばらまく。
「キング、手袋。なるべく、たくさん出して。」
手袋(軍手)を50双(ソウ)ほど出してくれる。
「ありがとう、キング。」
さっそく、姫子さんたちや生徒たち、都市の人たちに配り
「ドアの蝶番の半分があるはずなんで、探してください。」
みんな一斉にしゃがんで、ガラガラと金属音をさせながら探してくれる。
「見たのは、この袋の中に入れてくれ。」とアル
川原さんや滝口先生も袋の口を開けて、待ちかまえてくれている。
想定外の大きさ
アルテミスが
「キング、あの窓(渡り廊下側の出窓、上のイラスト参照)の大きさを測らせて欲しいって、銀河連合が言ってるわ。」
「銀河連合!? 」と、キングがアーチャーに目を向け
「なんだ。それぐらいならここに出した方が早いぞ。」
背後の白い靄(モヤ)の中から、大きな窓枠を出してきた。
(銀河連合だとサービスいいな、キング。)
「サイズ合ってんのかよ?」とバッカス
「もちろんだ。」
「念のために合わせます。それと、実際に測らせてもらいます。」とアーチャー
「うむ。」
キングがうなずくと、銀色の服を着た部下たちが学校の方から現れ、寮の中へと入って行った。
ニッカちゃんが
「あそこ、きれいに掃除したのに・・・。」
「念のためだろ?」と、マーズちゃんが私を見る。
「うん・・・見つからなかったし・・・アルテミス、私が前に見たのより、すごく大きいんだけど・・・。」
「そうなのよ。だから、もう一度、銀河連合が調べるって・・・初めてだそうよ。ヒドルもだけど、あんなに大きいのは」
「そういや、お前(アルテミス)、昨日『蛾の大きいもの』って言ってたよな。(8章-5)」とバッカス
「そうよ。ヒドルは、長さが5cmぐらいあるかしら・・あの幻覚の中の(13章-1)最初に出てきた籠(カゴ)の中に入っていたピンク色のイモ虫がそうよ。ライガは・・・。」と、アーチャーを見る。
寮の3階の寝室の出窓から銀河連合の部下が顔を見せると、アーチャーが部下たちに向かって窓枠を「ブンッ!」と投げた。
それを見ている人たちから「おおっ!」と声が上がる。
それを受け止めた部下は、もう一人の部下と一緒に実際の窓との大きさを合わせている。
今度は、部下たちがアーチャーに向かってうなづき、滑らせるように投げ返す。
アーチャーが「パシッ!」と受け止めると
「おおっ!」と拍手が起こった。
「おおっ!」と、キングも拍手をしている。
アーチャーが受け取った窓枠の前で、ヒマワリが両手を真横に広げ
「見て! 僕より大きい。」
「それは、それ以上大きくないって目安だから。」とヒアキッソス
「そっか。」
「大きいと窓枠が壊れてたよね。」とローズ
「それを、調べているんだよ。」
ヒアキッソスとローズとヒマワリは、寮の出窓を見上げる。
「ランチャー、あそこ、傷なんてなかったよね。」
リボルバーがたずね、ランチャーはしっかりと、うなずいている。
「いや、ある程度は大きさを変えられたよね。アルテミス」と私
「そうよ。皮膚が蛇腹(ジャバラ)みたいになってて、空気を押し出すみたいにこうやって(手の中の
空気を押し出すように、左右の手のひらを合わせたり離したりして)動くの。だから、狭い土の間から
広い穴の中に侵入できるのよ。」
「ええ!? それは意味がないではないか。」とキング
「皮膚が当たった所に、体毛や体液がついているかもしれないし、今後の参考もかねて調べてる。」
と私
「そ・・それぐらい知っておるわ!」
キングは顔を赤らめ、窓を見上げた。
話している間に、蝶番の片側が見つかったようだ。
アーチャーは都市の人たちから、それをもらうと
「では。」
私とアルテミス、ルナに会釈をし、消えた。
今晩の寝る所
蝶番が見つかって一段落し、私は(どこで寝ようかな?)と思う。
さっきの騒動で、すっかり忘れていた。
「校長先生、空いている部屋はありますか?」
「あー空いていることは、空いていますけど・・・何人ですか?」
「あーそうですね(ルナとアルテミスは二人部屋で)、とりあえず5人。」
「5人ですか・・・。」
「あっ、いや、ちょっと待ってください。みんなどうするの?」
女神たちは互いに顔を見合わせ、マーズちゃんが
「トカレフたちが、あのままで(1)、ヒアキッソスたちとサイケが合わさって(2)、お前んところの副隊長たちは、あのままで(5)、その隣が俺たち(4)ってことにしたんだけど・・・」

寮の3階1番奥の部屋と周囲の部屋の見取り図です。
マーズちゃんの話の中の数字は、この見取り図内の数字です。
キングが照れながら
「あーお前たち、コホッ、なんなら、わしの部屋を貸すぞ。」
「てめえと同じ部屋なんて、まっぴらごめんだね!」とマーズちゃん
「ほんとですわ。王だからといって、後から来て部屋を横取るなんて!」と、オフィーリアが珍しく
怒っている。
その怒った声を聞きながら、私は校舎の方に目を向ける。
来客や職員用の出入り口の所から、明かりが漏れている。
(あれだけの騒動に、気づかなかったのか?)
合宿部屋を勧められたので
私は校長先生に
「咲子さんは?」
「あっ、いや、見てませんね。そういや・・・幻覚なんですよね。」
「幻覚です。それは私が保証します。」
「あっ、はあ・・・ところで、泊まる所はどうしますか?」
「学校に」
「ん?」
「え?」
女神たちや部下たちが、私を見る。
(うわー!私のバカ!みんな絶対にこっちに来る気だ。夜にコッソリ行こうかと思ってたのに)
「あーありますよ。」と校長先生
「(あるんだ! それに)な、なんか嬉しそうですね。」
「はい。」と、にっこりうなずき
「実は、正直、咲子くんが心配だったんです。あんな事件があった後なのに、ずっと、あそこ(用務員室)にいるのは、心が傷ついて閉じこもっているんじゃないかと・・・いやーありがとうございます。
よくぞ、言っていただいて。」
「えっ、いや(決定!? )」
「青木くん!」
「はい、聞いていましたよ。いやーありがとうございます。男だと、どうも警戒されちゃって。あっ体育教師の青木です。」
(知ってる。)
「なあ、それって俺らも泊まれる?」と、笑顔のマーズちゃん
「はい! 生徒の合宿用に作った部屋なので、畳30枚の広さが。」
「キャー! 合宿ですよ、合宿。」とトカレフ
「えっ、お前ら来んのかよ?」とマーズちゃん
「当たり前じゃないですか?」とリボルバー
「30枚です。」とランチャー
「さっき、きいた。」
「お、泊まり♪、お、泊まり♪」とニッカちゃん
他の女神たちと部下たちも、はしゃいでいる。
「隊長、ライガが現れると困るので、私たちもそちらに。」と副隊長
「あっ、そうそう、ライガが来たらどうすんの?」と私
「大丈夫だろ、澪木がいれば。」とマーズちゃん
「澪様がいれば。」と部下たち
「心配なので。」と副隊長
「それって、男も良いってことだよね。」と、メロディーがサイケと手を取り合って喜んでいる。
「やった!」とヒマワリ
「あっ、じゃ、私も。」と校長先生
「わ、私も一緒に。」
青木先生がドキドキした様子で言う。
私は「ふー」と、ため息をつく。
(校舎の中を歩いて、一人でいろいろ考えたかったのに・・校舎の中で亡くなった生徒たちに会えるかもしれない。)
その横でキングが、面白くなさそうに外方を向いている。
主導権を取られた様に感じて、嫉妬している。
(こんなに私と長くいることは、これまでなかったし、まさか私がここまでやれるとは思ってなかった
だろう。今、キングは自分の無力さを痛感しているんだ。こういう時は、下手ななぐさめは、やめよう。
自分で乗り越えるしか、手はないのだから・・・。)
今晩は、学校の合宿部屋で休むことになりそうです。
男性の部下たちも一緒ですが、おかしな関係になることは、一切ありません。
次回
第19章ー第二都市(学校の1階、用務員室前)
1,「ここの生徒さん、あんまり本を読むのが好きじゃないみたいで」